教育としての学校給食の民間委託について

自治労神奈川県本部現業評議会議長 佐竹光雄

 

 いま学校給食の民間委託が各地の自治体で問題となっている。財政赤字と「官から民ヘ」の流れの中で、給食事業のコスト削減の視点から民間委託が検討されていると言え、学校給食の意義と役割を見つめ直し、教育の一環として充実を図る姿が見えない。

 学校給食は全国の小学校で99.3%、中学校ではミルク給食なども入れて82%の実施状況となっており、これは学校給食法が「義務法」でなく「奨励法」となっているからといえる。

しかし法の中で学校給食については教育の目的を実現するためとしてうたわれており、また「学習指導要綱」においても「学校給食の指導を、学級指導の1項目」として掲げられて、学校給食を「教育の一環」として捉えている。

いま、コンビニ、ファーストフード、レンヂでチン、出来合いの惣菜、そして個食など、子どもたちを取り巻く『食をめぐる環境』の中で、学校給食の果たすべき役割と意義は「食の教育」として、食事の正しい知識と習慣、栄養と健康、そしてさらに生命を育み養う「食」として、より一層の質的充実が必要であり、安全安心・おいしく、豊かで楽しい学校給食を「教育現場の実践」として取り組むことが重要となっている。

 食品への不信が続く中、安全安心であることへの信頼、そして地場産品の使用による、農漁業や食品生産とその活動、作る人の姿や暮らし、土地や自然、地域社会の伝統や営みなどを、食材を通じて伝え教え、子どもたちは教科としてでなく学んでいく。

 また、子どもにとって「食事」は、親(大人)が自分たちの元気な成長を願って、作ってくれることであることを知り、愛情や慈しみ、人間関係を、料理を作る姿を目にしながら学びとっていく。食事をしながら作る人とのふれあいで実感し、その言葉を聞き、「食」の背景や大切さを知る。

 こうした「教育実践」が行えるためには、ゆとりある給食時間が必要であり、学校給食は単に食事を摂るという考えは切り替えていかなければならない。

 学校給食の委託問題について、食事の提供という点については、多くの給食供給事業や調理業務を担っている民間業者の存在を否定はしない。しかし教育の一環としての学校給食に対応できない問題がある。何故ならば、事業委託は契約による業務内容とマニュアルであり、教職員や生徒、保護者と共に「食の教育」に踏み込めないからである。

いま全国の給食調理員は様々な取り組みを展開している。生徒とのふれあい給食、アレルギー食対応、地場産品使用の独自献立の拡充や、食への理解を高める親との交流、福祉給食サービス提供などの地域社会との連携など、調理場の『外』に視野を広げ、学校給食の豊富化を図っている。

「作る人」と「食べる人」が切り分けられることなく、「食物と自然環境、調理と食事」は人間として成長していく上でひとつのものであることを学校給食を通じて表現する。

コストが重要な要素であることは否定しないが、事業運営のコストのみに判断基準を置くのでなく、学校給食が果たす教育としての役割と充実度、地域福祉との係りなど、その意義と可能性を活用し、付加価値を拡充させて総合的評価として考えるべきである。コスト優先の方針に対し、未来を担う子どもたちの親として声を出すときだ。私たち給食調理員もその期待と信頼に応える。